- 家で測る血圧が毎回ちがう理由
- 測り方のミスで、数値がどれくらい高く出るか
- 朝と晩、どんな条件で測ればいいか(日本高血圧学会のガイドラインに沿った方法)
「さっきは130だったのに、測り直したら118」。家で血圧を測っていると、こんなことはよくあります。血圧計が壊れているわけではありません。血圧はもともと揺れ動くものですし、測り方しだいで数値は簡単に10以上変わります。
私は総合病院で医療機器を担当している臨床工学技士です。病院で使う自動血圧計も、家庭用の血圧計も、腕帯(カフ)で腕をしめつけて血管の振動を読み取る、同じしくみ(オシロメトリック法)で測っています。だからこそ、病院でも家でも「ぶれる理由」は共通しています。この記事では、その理由と、毎回同じ条件で測るためのコツをまとめます。
結論:上腕式で、朝と晩に、座って1〜2分たってから2回測る
先に結論です。日本高血圧学会のガイドライン(2025年版)に沿った測り方は、次のとおりです。
- 上腕(二の腕)に腕帯を巻くタイプの血圧計を使う
- 朝と晩、決まった条件で測る
- 背もたれのある椅子に座り、1〜2分落ち着いてから測る
- 1回の機会に2回測って、平均を記録する
これだけで、日によって数値がばらばらになる原因の多くはなくせます。ここから、なぜそうするのかを順番に説明します。
血圧の数値がぶれる2つの理由
1. 血圧そのものが、いつも揺れ動いている
血圧は一定ではありません。呼吸、話す、体を動かす、緊張する、トイレを我慢する。こうしたことで、数分のあいだにも上がったり下がったりします。続けて2回測ると、1回目のほうが高く出ることもよくあります。
つまり「測るたびに違う」こと自体は、ふつうのことです。大事なのは、毎回同じ条件で測って、日ごとの変化を比べられるようにすることです。
2. 測り方のミスで、実際より高く出る
もう1つの理由は、測り方です。米国心臓協会(AHA)は、よくある測り方のミスで、上の血圧(収縮期血圧)がどれくらい高く出るかの目安を示しています。

| 測り方のミス | 高く出る幅の目安(上の血圧) |
|---|---|
| 服の上から腕帯を巻く | 5〜50 mmHg |
| トイレを我慢している | 10〜15 mmHg |
| しゃべりながら測る(電話も) | 約10 mmHg |
| 腕を台に乗せず、下げたり浮かせたりしている | 最大10 mmHg |
| 背もたれにもたれず、足も床についていない | 6〜10 mmHg |
| 腕帯が腕の太さに対して小さすぎる | 2〜10 mmHg |
| 脚を組んでいる | 2〜8 mmHg |
どれも数字だけ見ると小さく感じますが、いくつか重なると簡単に10〜20高く出ます。「病院で測ると高いのに、家だと低い」「その逆」という人は、まずここを疑ってみてください。
腕帯の高さで数値が変わる理由
意外と見落としやすいのが、腕帯と心臓の高さの差です。
血液にも重さがあるので、心臓より低い位置ほど、血管にかかる圧は高くなります。計算すると、高さの差1cmあたり約0.7〜0.8mmHgです。腕帯が心臓より10cm低ければ、7〜8mmHgほど高く出る計算になります。逆に腕を持ち上げすぎると、低く出ます。
テーブルが低くて腕が下がっている、ソファに沈み込んで測っている。こういうときは、クッションやタオルを腕の下に入れて、腕帯が胸の真ん中(心臓)と同じ高さに来るようにします。
手首で測るタイプの血圧計が「誤差が出やすい」と言われるのも、同じ理由です。手首は心臓との高さがずれやすく、ずれたぶんがそのまま数値に出ます。
正しい測り方(手順)

- 測る前にトイレを済ませる。測る前のたばこ・お酒・カフェイン(コーヒーなど)は避ける
- 背もたれのある椅子に深く座る。脚は組まず、足の裏を床につける
- 腕帯を素肌に巻く。袖をまくると腕がしめつけられるので、脱ぎやすい服で測る
- 腕帯の位置と巻く強さは、取扱説明書のとおりにする(ずれていたり、ゆるすぎたりすると正しく測れない)
- 腕を台に乗せて力を抜き、腕帯が心臓と同じ高さになるようにする
- そのまま1〜2分静かに座ってから、測定ボタンを押す
- 測っている間は話さない・動かない
- 続けて2回測り、2回の平均を記録する
朝と晩、いつ測るか
日本高血圧学会のガイドライン(2025年版)では、次の条件で測ることが勧められています。
| 測るタイミング | 条件 | |
|---|---|---|
| 朝 | 起きてから1時間以内 | トイレのあと・朝食の前・朝の薬を飲む前、座って1〜2分たってから |
| 晩 | 寝る前 | 座って1〜2分たってから |
朝は「起きてすぐ、何かをする前」、晩は「寝る前」と覚えておくと、毎日同じ条件にしやすくなります。食事や入浴、お酒のすぐあとは血圧が変わりやすいので、そのタイミングは避けたほうが日ごとの比較がしやすくなります。
記録は、2回の平均を毎日つけていきます。1日だけの数値で一喜一憂するより、何日か続けた平均(学会は週5日以上の測定を勧めています)で見るほうが、本当の傾向がわかります。スマホのアプリと連携できる血圧計なら、記録の手間が省けます。
臨床工学技士(CE)として気をつけていること
病院で血圧計を点検したり、使い方を説明したりする立場から、家庭用でも見てほしいポイントです。
- 腕帯のサイズが腕に合っているか:腕帯には対応する腕まわりの範囲があります(取扱説明書や腕帯に書いてあります)。小さすぎると高く、大きすぎると低く出ます。腕が太い人・細い人は、別売りの腕帯がないか確認してください
- 腕帯とホースの傷み:腕帯のマジックテープが弱くなったり、ホースが折れたり裂けたりすると、正しく測れません。空気が漏れる音がしたら交換を考えます
- 電池が弱っていないか:電池が減ると、測定が止まったり、エラーが増えたりします
- 病院の数値と比べたいとき:家の血圧計を診察に持っていき、病院の血圧計と続けて測り比べてもらうと、大きなずれがないか確かめられます
- 買うなら上腕式:ガイドラインでも、家庭で測るなら上腕に腕帯を巻くタイプが基本とされています。手首式は持ち運びには便利ですが、高さを合わせるのが難しいぶん、ぶれやすくなります
よくある質問
Q. 1回目と2回目で10以上違います。壊れていますか?
壊れているとは限りません。1回目は体がまだ落ち着いていなくて、高く出ることがよくあります。毎回大きく違う場合は、座ってから測るまでの時間を長めにとり、腕帯の巻き方と腕の高さを見直してみてください。それでも極端にばらつくときは、メーカーに点検を相談しましょう。
Q. 服の上から測ってもいいですか?
おすすめしません。米国心臓協会の目安では、服の上から巻くと5〜50mmHgも高く出ることがあります。基本は素肌に巻きます。袖をまくり上げて腕がしめつけられるのもよくないので、脱ぎやすい服で測るのがおすすめです。
Q. 家で測ると、病院より低く出ます。どちらが正しいですか?
病院では緊張して高く出る人がいます(「白衣高血圧」と呼ばれます)。逆に、病院では普通なのに家で高い人もいます。だからこそ、家で正しく測った数値は、診察のときに大切な情報になります。記録をそのまま医師に見せてください。数値の判断や薬の調整は、自己判断せずに医師に任せましょう。
まとめ
- 家で測る血圧がぶれるのは、血圧そのものの揺れと、測り方のミスが重なるから
- 服の上から巻く、トイレの我慢、会話、腕の高さのずれなどで、10以上高く出ることがある
- 上腕式の血圧計で、朝と晩、座って1〜2分たってから2回測り、平均を記録する
測り方をそろえるだけで、毎日の数値はぐっと比べやすくなります。まずは今日の晩、寝る前の1回から試してみてください。
