- パルスオキシメーターの数値が低く出る・ばらつく原因
- 正しく測るための手順と、正しく測れているかの見分け方
- 数値をどう受け止めて、どんなときに医師に相談するか
指にはさむだけで測れるパルスオキシメーター。測ってみたら「92」と出てドキッとしたのに、測り直したら「97」だった。こんな経験はありませんか。
パルスオキシメーターは、光で血液の色を読み取って酸素の量を推測する機械です。だからこそ、光がうまく届かない条件では、数値が低く出たり、ばらついたりします。私は総合病院で医療機器を担当している臨床工学技士で、病院でも毎日のようにこの機械を扱っています。この記事では、数値がずれる原因と、正しく測るコツをまとめます。
結論:指を温めて、動かさず、20〜30秒待ってから読む
- 測る前に指を温める。ネイル(マニキュア・ジェルネイル・付け爪)や指の汚れは落とす
- 手の甲を上にして、指を奥まで入れ、測っている間は指や腕を動かさない
- 着けてすぐの数値は不安定なので、20〜30秒ほど表示を見て、安定してから読む
- 1回の数値で判断しない。何度か測って、いつもの値と比べる
これは、日本呼吸器学会の委員会が監修した、家庭用パルスオキシメーターの手引きに書かれているポイントです。
パルスオキシメーターは「光」で酸素を推測している
血液の中のヘモグロビンは、酸素とたくさん結びつくと鮮やかな赤に、少ないと暗い赤になります。パルスオキシメーターは、指の片側から光を当てて、反対側のセンサーに届いた光の量から「血液の赤さ」を読み取り、酸素とどれくらい結びついているか(SpO2:経皮的動脈血酸素飽和度)を計算しています。
ポイントは2つです。
- 読み取っているのは、脈打つ動脈の血液。指先の血流が弱いと、うまく読み取れない
- 結果はあくまで推測値。手引きによると、採血して測る本当の値と比べて**±2〜3%ずれることもある**
さらに、医療機器として認証された機種どうしでも、表示される値に1〜2%の差が出ることがあるとされています。「家の機械と病院の機械で数値がちがう」のは、珍しいことではありません。
数値が低く出る・ばらつく主な原因

1. 指が冷えている・血流が弱い
いちばん多い原因です。寒い部屋や、冷たい飲み物を持った直後など、指先の血流が弱いと、光で脈を読み取りにくくなります。手引きでも、指先が冷えていると「普段より低い値を出す」「数値がばらつく」「測定ができなくなる」といったことが起きやすいと書かれています。
2. ネイル・指の汚れ
マニキュアやジェルネイル、付け爪は、光をさえぎって正確な値が出ない原因になります。測るときは、ネイルをしていない指を使うか、落としてから測ります。
3. 指や腕が動いている
測っている最中に指を動かしたり、話しながら手を振ったりすると、脈を正しく読み取れず、数値が不安定になります。機器を手や机で軽く支えると、動きを抑えられます。
4. 装着の向き・位置がずれている
指を奥まで入れていない、向きが逆、などでも正しく測れません。向きは取扱説明書のとおりにして、指を正しい位置まで入れて軽く伸ばします。指に力が入っていても測りにくくなります。
5. 着けてすぐ・強い光の下・血圧と同時に測っている
着けた直後や指を動かした直後は、数値が落ち着きません。メーカーの取扱説明書では、ほかにも次のような場面で正しく測れないことがあると注意されています。
- 太陽光などの強い光が当たる場所で測る
- 血圧計の腕帯で締めつけている腕の指で測る(家で血圧とSpO2を続けて測るときは、反対の手で測るか、血圧を測り終わってから測る)
- パルスオキシメーターを2台同時に着ける
正しい測り方(手順)
- 座って安静にし、呼吸を整える
- 手や指を温めて、血流をよくする
- ネイルや指の汚れを落とす(またはネイルをしていない指を使う)
- 手の甲を上にして、取扱説明書の向きで、指を奥まで入れる
- 指や腕を動かさず、力を抜く
- 20〜30秒ほど表示を見て、数値が安定してから読む
- 毎日測るなら、同じ時間・同じ条件で測る
正しく測れているかの見分け方

パルスオキシメーターの画面には、酸素の数値(SpO2)のほかに、脈拍数と、脈の強さを表すバーや波形が出ます。病院でモニターを見るときも、私たちはまず「波形がきれいに出ているか」を確かめます。
- 脈拍数がしっかり出ているか:脈拍数がおかしい(極端に高い・低い、表示が出ない)ときは、正しく測れていない可能性があります
- バーや波形がリズミカルに振れているか:振れが小さい、不規則なときは、数値が本当の値から大きくずれている可能性があります
- PI値(機種によってはあり):指先の血流の強さを表す数値です。手引きでは、一般的に1.0%を切ると正確さに影響が出てくるとされています。低いときは、指を温めるか、別の指で測り直します
数値をどう受け止めるか
手引きでは、正常な酸素飽和度は95〜98%程度、安静時に90%を切ると呼吸不全に相当すると言われている、と紹介されています。ただし、ふだんの値は年齢や持病によって人それぞれです。重い呼吸器や心臓の病気がある人の中には、ふだんから90%を切っている人もいます。
だからこそ大事なのは、自分のふだんの値を知っておくことです。手引きでは、ふだんの平均的な値より3〜4%低い状態が続く場合は、医師に連絡する目安になるとされています(日本呼吸器学会の資料より)。
- 1回だけ低く出たときは、まず指を温め、呼吸を整えて、何度か測り直す
- 医師に伝えるときは、数値だけでなく、測ったときの状況・体調や症状・脈拍数・使っている機種もあわせて伝える
- 持病がある人は、どんな数値になったら受診するか、あらかじめ主治医と決めておく
息苦しさなどの症状があるときは、数値が正常に見えても、数値の確認より先に医療機関に相談してください。
臨床工学技士(CE)として気をつけていること
- 医療機器認証番号のある機種を選ぶ:「パルスオキシメータ」と名のれるのは、医療機器として認証されたものだけです。広告や取扱説明書、本体に16桁の医療機器認証番号があるか確かめます。認証されていない似た商品は、精度の確認がされていません
- スマートウォッチの血中酸素は別物:手引きでは、スマートウォッチは測定原理がパルスオキシメーターと異なり、医療機器ではないとされています。受診の目安には、医療機器のパルスオキシメーターを使います
- つけっぱなしにしない:長時間着けたままにすると、低温やけどやすり傷の原因になることがあります。測り終わったら外します
- 「売上1位」より認証番号:手引きでも、通販サイトの売上順位のような文言は品質を保証するものではないと注意されています
よくある質問
Q. 指によって数値がちがいます。どの指で測ればいいですか?
指によって血流の強さがちがうので、数値が少し変わることはあります。取扱説明書で勧められている指があればそれに従い、毎回同じ指で測ると比べやすくなります。PI値が出る機種なら、PI値が高い(血流が強い)指を選ぶのも方法です。
Q. 家族で同じ機械を使っても大丈夫ですか?
使えます。ただ、ふだんの値は人によってちがうので、記録は人ごとに分けておきましょう。子どもに使うときは注意が必要です。機種によっては、取扱説明書で「乳幼児や新生児には使用しない」とされているものがあります。使う前に、対象になる年齢や指の太さを取扱説明書で確かめてください。
Q. 一度だけ「90」と出ました。すぐ病院に行くべきですか?
息苦しさなどの症状があるときは、迷わず医療機関に相談してください。症状がなく、着けてすぐや指が冷えていたときの数値なら、まず指を温めて安静にし、20〜30秒待ってから何度か測り直します。それでも低い値が続くときや、ふだんより3〜4%低い状態が続くときは、医師に相談しましょう。
まとめ
- パルスオキシメーターは、光で酸素の量を推測する機械。本当の値と±2〜3%ずれることもある
- 指の冷え、ネイル、動き、装着のずれ、着けてすぐの数値が、低く出る・ばらつく主な原因
- 指を温めて、動かさず、20〜30秒待って、脈拍数と波形が安定してから読む
- 1回の数値で判断せず、自分のふだんの値と比べる。気になるときは医師に相談
パルスオキシメーターは、正しく使えば体調の変化に早く気づける心強い道具です。まずは体調のよいときに何度か測って、自分の「いつもの値」を知っておきましょう。
