- 体組成計が体脂肪率を出すしくみと、数値が動く理由
- 測るのに向いている時間と、避けたほうがいい場面
- 体組成計を使ってはいけない人・数値を参考程度に見たほうがいい人
朝に乗ったら体脂肪率が「24.1%」。お風呂のあとにもう一度乗ったら「22.8%」。1日で脂肪が1%以上も減るはずはないのに、どちらが本当なのか迷ったことはありませんか。
体組成計は、体脂肪を直接はかっているわけではありません。体に弱い電気を流して、その通りやすさから計算で推定しています。しくみを知ると、数値が動く理由と、上手な付き合い方が見えてきます。私は総合病院で医療機器を担当している臨床工学技士です。この記事では、家庭用の体組成計のしくみと、数値に振り回されない使い方をまとめます。
結論:数値が動くのは水分のせい。毎日同じ時間・同じ状態で測って、変化の傾向を見る
- 体組成計は、電気の通りやすさから体脂肪率を推定している。体の水分が変わると、脂肪が変わっていなくても数値が動く
- 食後1〜2時間、入浴やサウナのあと、激しい運動のあと、体調がわるいときは測らない
- 測るなら、食後2時間以上たった、毎日同じ時間帯に。素足で、足の裏を電極にしっかり乗せる
- 1回の数値に一喜一憂せず、何週間かの変化の傾向を見る
- ペースメーカーなど体内に植え込む医療機器を使っている人は、乗ってはいけない
体組成計は「電気の通りやすさ」から計算している(しくみ)

家庭用の体組成計は、「生体電気インピーダンス法(BIA法)」というしくみで測っています。
- 足の裏(機種によっては手も)の電極から、感じないほど弱い電流を流す。オムロンの取扱説明書では、50キロヘルツ・500マイクロアンペアと書かれています
- 体の組織のうち、水分の多い筋肉や血管は電気を通しやすく、脂肪はほとんど通しません。この差から、体の電気抵抗(電気の通りにくさ)を測ります
- 測った電気抵抗に、登録した身長・体重・年齢・性別を組み合わせ、メーカーが集めたデータから作った計算式で、体脂肪率を出します
ここで大事なのは、体組成計が見ているのは電気の通りやすさだという点です。電気を通すのは主に体の水分なので、体の水分の量や、体の中での水分のかたよりが変わると、脂肪の量が同じでも、表示される体脂肪率が変わります。取扱説明書でも、体内の水分が変わると「みかけ上」体脂肪率が変化する、と説明されています。
体脂肪率が毎回ちがう主な原因

1. 食事や水分をとったあと
メーカーの取扱説明書では、食後1〜2時間、たくさん水分をとったあと、お酒を多く飲んだあとは、測るのを避けるように書かれています。体の中の水分の量が大きく変わっているためです。
2. 入浴・サウナ・運動のあと
サウナや長湯、入浴の直後、激しい運動の直後も、測るのを避ける場面です。冒頭の「お風呂のあとに乗ったら下がった」は、この影響を受けている可能性があります。取扱説明書には「充分休んでから測定してください」とあります。
3. 1日の中で、水分が脚にたまっていく
オムロンの取扱説明書によると、体の水分は、時間がたつにつれて重力で脚のほうにたまりやすくなります。夕方から夜に足がむくみやすいのはこのためで、「水分の日内変動」と呼ばれます。朝と夜とでは、上半身と下半身の水分の割合がちがうので、電気の通り方も変わります。両手と両足の電極で測るタイプは、この水分のかたよりの影響を受けにくい、と説明されています。
4. 体調がわるいとき
発熱、下痢、二日酔いのときも、測るのを避けるように書かれています。体の水分の状態がいつもとちがうためです。
5. 足の裏の状態・冷え
電極と足の裏の触れ方も、数値に影響します。
- 靴下をはいている、足の裏にほこりや汚れがついている
- 足の裏が乾燥している、かかとの皮膚が硬い
- 体や電極がとても冷たく、血の巡りがわるい
タニタの取扱説明書では、足の裏と電極の触れ方がわるいと、体脂肪率が低く表示されたり、エラーになったりすることがあるとされています。足の裏が乾燥しているときや、かかとが硬いときは、ぬらしたタオルなどで足の裏を少し湿らせてから測ります。
6. 置き場所と姿勢
じゅうたんや畳の上では、正しく測れません。硬く平らな床に置きます。ひざを曲げる、測っている間に動く、内ももがくっついている、といったことも、数値がずれる原因になります。内ももがついてしまう人は、乾いたタオルなどをはさんで測るように書かれています。
測るのに向いている時間

測るのに向いている時間は、メーカーの説明で少しちがいます。
| メーカー | 取扱説明書のおすすめ |
|---|---|
| タニタ(BC-705N など) | 起床直後を避け、食後2時間以上たった同じ時間帯 |
| オムロン(HBF-375 など) | 起床後か、食後2時間以上たってから |
起床直後については、すすめるメーカーと、避けるようにいうメーカーがあります。どちらにも共通しているのは「食後2時間以上たってから」と「同じ時間に測る」の2つです。
家で続けやすいのは、たとえば夕食前です。昼食から時間がたっていて、お風呂の前なら入浴の影響もありません。朝に測りたい人は、使っている機種の取扱説明書で、起床後に測ってよいかを確かめてください。どの時間を選んでも、毎日同じ時間・同じ状態で測ることがいちばん大事です。
正しく測る手順
- 食後2時間以上たってから、毎日決めた時間に測る
- なるべく服の少ない状態にする(服を着たままだと、服の重さも体重に入ります)
- 体組成計を、硬く平らな床に置く
- 素足になり、足の裏の汚れを落とす。乾燥しているときは、足の裏を少し湿らせる
- つま先側とかかと側の電極に、足が均等にかかるように乗る
- ひざを伸ばして、測り終わるまで動かない。内ももがつくときは、乾いたタオルをはさむ
- 両手でも測るタイプは、取扱説明書の姿勢(腕をまっすぐ伸ばすなど)で持つ
身長・年齢・性別は、計算式に使われています。登録がまちがっていると、正しい体脂肪率になりません。家族で使うなら、自分の番号で乗っているかも確かめましょう。
数値の見方:1回の数値より「傾向」
タニタの取扱説明書には、測定値は体の水分や体温の影響を大きく受けるので、細かい変化にとらわれず、長期的な変化の傾向を見ることをすすめる、と書かれています。
- 前の日と比べて0.5%上がった、下がったは、水分の変化の範囲かもしれません
- 1週間ごとの平均や、数週間のグラフで、上がっているか下がっているかを見ます
- スマホのアプリに記録できる機種なら、グラフで見ると傾向がわかりやすくなります
また、体組成計のメーカーや機種がちがうと、基準にしている測り方や計算式もちがいます。オムロンは水中体重秤量法、タニタはDXA法(二重X線吸収法)を、計算式の基準に使っていると説明しています。ジムの体組成計と家の体組成計の数値を比べないで、記録は同じ1台でとりましょう。
使ってはいけない人・数値を参考程度に見たほうがいい人
ペースメーカーなどを使っている人は、乗ってはいけない
体組成計は体に電流を流すので、タニタやオムロンの取扱説明書では、次のような医療機器を使っている人は**使ってはいけない(禁止)**とされています。
- ペースメーカーなど、体の中に植え込む医療機器
- 人工心肺など、生命を維持するための医療機器
- 心電計など、体に着けて使う医療機器
これらの機器が誤って動き、重大な事故につながるおそれがあるためです。
数値を「変化の傾向」として見たほうがいい人
取扱説明書では、次のような人は、体の水分の量などが平均的な人と大きくちがう可能性があるため、正しく測れない場合があるとされています。
- 妊娠中の人、人工透析を受けている人、むくみがひどい人
- 体の水分を変える薬(利尿剤など)を飲んでいる人
- 体の中に金属が入っている人
- 成長期の子ども、高齢の人、骨の密度がとても低い人
- 発熱している人
- スポーツ選手やボディビルダーなど、筋肉が多い人
こうした人は、数値そのものではなく、変化の傾向を見る参考値として使うようにすすめられています。
臨床工学技士(CE)として気をつけていること
- 「推定値」だと知っておく:医療機器の多くは、測りたいものを直接はかっていません。体組成計も、電気抵抗という別の量から計算しています。何から計算しているかを知ると、どんなときにずれるかがわかります
- 条件をそろえてから比べる:病院で機器の数値を比べるときも、まず測った条件がそろっているかを見ます。家でも、時間・服装・足の裏の状態をそろえてから、前の数値と比べます
- ペースメーカーの人の家族も気にかける:本人は知っていても、家族が「乗ってみて」とすすめてしまうことがあります。家に植え込み型の医療機器を使っている人がいるなら、家族みんなで知っておきます
- 電極を清潔に保つ:電極が汚れていると、足の裏との触れ方が変わります。取扱説明書の方法で、ときどきふいておきます
よくある質問
Q. 朝と夜で体脂肪率が2%ちがいます。どちらが正しいですか?
どちらかが正しく、どちらかがまちがい、というものではありません。体の水分の量やかたよりが、朝と夜でちがうために起きる差です。比べるときは、毎日同じ時間帯の数値どうしで比べてください。
Q. 体重も毎回少しちがいます。体重計は正確ですか?
体重にも、メーカーが保証している精度の範囲があります。たとえばオムロンの HBF-375 の取扱説明書では、67.5kgまでは±200gとされています。また、食事や水分、トイレの前後でも体重は変わります。体重も、同じ時間・同じ服装で測って、傾向で見ましょう。
Q. 体脂肪率を早く下げたいので、毎日何回も測っていいですか?
1日の中では水分で数値が動くので、回数を増やすと、かえって迷う原因になります。1日1回、決めた時間に測るほうが、変化がわかりやすくなります。減量や運動を始めるときは、取扱説明書にもあるとおり、自分だけで判断せず、医師や専門家に相談してください。
まとめ
- 体組成計は、電気の通りやすさから体脂肪率を推定している。体の水分が変わると、脂肪が変わらなくても数値が動く
- 食後1〜2時間、入浴・サウナ・運動のあと、体調がわるいときは測らない
- 食後2時間以上たった、毎日同じ時間に、素足で正しく乗る。足の裏が乾燥していたら少し湿らせる
- 1回の数値ではなく、数週間の傾向を見る。記録は同じ1台で
- ペースメーカーなど植え込み型の医療機器を使っている人は、乗ってはいけない
体組成計は、毎日の小さな変化ではなく、何週間かの流れを見るのに向いている道具です。まずは測る時間を1つ決めて、同じ条件で記録を続けてみてください。
参考資料
- 体組成計 BC-705N/BC-756 取扱説明書(タニタ):ペースメーカー等の体内機器装着者は使用しない、起床直後を避け食後2時間以上たった同じ時間帯、サウナ・長湯・激しい運動のあとや体調不良時は避ける、素足で足の裏の汚れを落とす、足の裏の接触不良で体脂肪率が低く出ることがある、長期的な変化の傾向を見る
- 体重体組成計 カラダスキャン HBF-375 取扱説明書(オムロン):医用電気機器との併用禁止、BI法のしくみ(50kHz・500μA)、起床後か食後2時間以上たってから、硬く平らな床、乾燥した足裏は少し湿らせる、正しく測定できない場合がある人、体重計の精度
- 体脂肪計 HBF-306 取扱説明書(オムロン):体内水分の日内変動、体脂肪率がみかけ上変化する原因(食後1〜2時間、入浴直後、運動直後、寒い場所、発熱など)
